社内恋愛症候群~イジワル同期の甘い素顔~
なんとか立ち上がった私の目の前で、驚くことが起きた。

開くはずのない扉がゆっくりと開いたのだ。

「ちょっと……人の家の前でなにやってるんですか?」

中から出てきたのは、あきらかに部屋着の女性だった。ショートパンツから伸びる足がすごく綺麗だ。

化粧っ気はなかったけれど、それゆえに顔の端整さが際立つ。私は口を開けて驚いたままだったけれど、我に返って説明をした。

「あの……私、成瀬……さんの同僚の滝本といいます。酔いつぶれてしまったので彼を送ってきたんですけど」

動揺しつつも状況の説明をする。

「え、そうだったんですか。あ〜あ、お酒弱いのに調子にのるから。わざわざすみません」
ショートカットの女性は、いつものことだと言わんばかりに成瀬の顔を覗きこんでいる。

「もう、仕方ないなぁ」

女性は成瀬の背後に回り、脇に手を入れて引きずり始めた。私もなんとなく足をもって部屋の中に入れるのを手伝った。

さっきまではかろうじて起きていたはずの成瀬は、目を閉じたままで「痛い」とだけ呟く。

「すみません。こんなことまでさせて」

ふーっと息を吐くと、一仕事終えたようにパンパンと手をはたいた。成瀬は玄関の靴の間でまるまっている。

「たぶんもうちょっとしたら、自分でベッドに入ると思うんで、とりあえずこのままで大丈夫です」

この人、成瀬のことよくわかってるんだ。
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