社内恋愛症候群~イジワル同期の甘い素顔~
「なんだかご迷惑をかけてすみません」
笑顔の彼女になんとか作り笑いを返す。混乱しすぎて正直そうするしかできなかった。
「あの……これさっきコンビニで買ったんですけど、冷やしておいてあげてください」
コンビニの袋を渡すと、開いて中身を見ている。
「すみません、わざわざ飲み物まで。明日哲平が起きたら連絡させます」
——哲平って呼び捨てた。
「いえ、あの……私はこれで失礼します」
「え、あのタクシーが来るまでなかで……」
「いえ、大丈夫ですから」
私は廊下に落としていた自分のバッグを拾うと、階段を駆け下りた。
主のいないはずの成瀬の部屋から出てきた部屋着の女性。彼を下の名前の“哲平”と呼ぶ人はそう多くないはずだ。
きっとあの人は……成瀬の彼女だ。
そう考えれば説明がつく。化粧も落として、部屋着になって成瀬の帰りを待っていたに違いない。大学時代から付き合っているのだから、成瀬が酔っぱらったらどうなるかくらいは、知っているはずだ。
今まで噂でしか聞いたことなくてどこか現実味がなかったのだけれど、本当にいたんだ。
タクシーの中まで、私は間違いなく幸せだった。あの無防備な寝顔を独り占めしたような気になっていた。
笑顔の彼女になんとか作り笑いを返す。混乱しすぎて正直そうするしかできなかった。
「あの……これさっきコンビニで買ったんですけど、冷やしておいてあげてください」
コンビニの袋を渡すと、開いて中身を見ている。
「すみません、わざわざ飲み物まで。明日哲平が起きたら連絡させます」
——哲平って呼び捨てた。
「いえ、あの……私はこれで失礼します」
「え、あのタクシーが来るまでなかで……」
「いえ、大丈夫ですから」
私は廊下に落としていた自分のバッグを拾うと、階段を駆け下りた。
主のいないはずの成瀬の部屋から出てきた部屋着の女性。彼を下の名前の“哲平”と呼ぶ人はそう多くないはずだ。
きっとあの人は……成瀬の彼女だ。
そう考えれば説明がつく。化粧も落として、部屋着になって成瀬の帰りを待っていたに違いない。大学時代から付き合っているのだから、成瀬が酔っぱらったらどうなるかくらいは、知っているはずだ。
今まで噂でしか聞いたことなくてどこか現実味がなかったのだけれど、本当にいたんだ。
タクシーの中まで、私は間違いなく幸せだった。あの無防備な寝顔を独り占めしたような気になっていた。