社内恋愛症候群~イジワル同期の甘い素顔~
佐山課長になにを言われても平気だったのに、成瀬の言葉に目頭が熱くなる。

「上司に向かってなんて口の利き方をするんだ!」

ついに怒った佐山課長が立ちあがったが、成瀬も一歩もひかない。

ハッと我に返った私は、このままではいけないと思い、私は成瀬の腕をひっぱった。

「成瀬、もういいよ」

「よくない! ここで言わなきゃお前の努力が無駄になるだろう」

成瀬が私の腕を振り払った。バランスを崩した私がゴミ箱に躓いて倒れそうになったのを、誰かが支えてくれる。

背後から低くてよく通る声が聞こえてきた。

「そこまでだ、成瀬。それ以上はお前が口を出すことじゃない」

振り向くとそこには、険しい顔で私を支える衣川課長の姿があった。

「でも衣川さん……」

「成瀬!」

「はい……」

聞いたこともないような衣川課長の怒声に、一瞬でフロアが静かになる。

「うちの部下がすみませんでした」

さっきまでの大声とは違い、いつも通りの声で衣川課長は佐山課長に頭を下げた。

そんな衣川課長の姿を見て、成瀬は尚も不満気だ。
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