社内恋愛症候群~イジワル同期の甘い素顔~
「成瀬さんとうまくいってるんですね?」

あぁ、そのことについてまだ話をしていなかった。貴和子さんには詳しく話をしていなかったけれど、きっと察しのいい貴和子さんのことだから理解してくれるだろう。

「成瀬とは……これから先ずっと同期でいいライバルだと思う」

「汐里さん?」

朔ちゃんが私の名前を読んで眉を下げた。貴和子さんも私の成瀬への思いに気がついていたはずだ。けれどなにも言わずに私の話を聞いてくれている。

「ちゃんと確認したわけじゃないんだけど、成瀬が彼女のこと話すときの様子ですごく親密だって分かったの。だからつけ入る隙はないなって。ごめんね、朔ちゃんは呼び出してまで色々相談したのに。でも今回のことでわかったの。同期としてはすごく大切にされてるってことが。それだけで十分だもの」

恋人として特別に離れなくても、同期として特別に思ってくれているだけで十分だ。

「詳しいことはわからないけど……でも滝本さんがそれでいいって思ってるならいいと思う。それに状況はいつも変わるものよ。そして人の気持ちもね」

貴和子さんがアイスティーを一口飲んでアトバイスしてくれる。

「状況が変わっても、私と成瀬の関係が変わるとは限らないですけどね」

苦笑いを浮かべる私にふたりの心配そうな眼差しが向けられた。

「やだ! もう。せっかく美味しいもの食べてるんだから、しんみりしないでください。それよりも新しい契約が取れたこと、お祝いしてください」

私がミックスジュースのグラスを差し出すと、ふたりの自分のグラスを差し出してくれた。

カチンと合わせて乾杯をすると三人で笑顔を作った。

やりがいのある仕事、気の合う仲間。それがいるだけでも私の人生素敵だと思う。

たとえ、好きな人の気持ちが手に入らないとしても。
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