社内恋愛症候群~イジワル同期の甘い素顔~

「いらっしゃいませ」

あのころと変わらない大きな声が、店内に響いた。

「ふたりなんですけど」

成瀬が店員さんに人数を告げると、奥にある小上がり案内された。

あのころと変わってない風景に、気分が上がる。

すこし油っぽい壁に充満するソースの香ばしい香り。よく磨かれた鉄板。全部あの頃のままだ。

メニューを手にして、ふたりで何を食べるか相談した。

「相変わらず、メニュー手書きだね」

「昔と変わらず読みづらいこと、このうえないな」

メニューをみているだけでも、話が尽きなかったが成瀬が“政宗スペシャル”で私は“豚玉、餅チーズ入”に決めた。

「なぁ、焼きそばもいっとく?」

「食べちゃおうか?」

成瀬の誘いに思わずノッてしまう。

「そう来なくちゃな。すみませーん」

大きな声で店員さんを呼んで注文をした。

ビールとレモン酎ハイが先に届いて、乾杯をした。

「お疲れー!」

ガチャンとジョッキを合わせて、ふたりともグビグビと煽った。

「っはー! 旨い」

口元のビールの泡を拭いながら、成瀬が声を上げた。

「あぁ……今週も疲れた〜」

レモン酎ハイの入ったジョッキをテーブルに置きながら思わず本音が出てしまう。

「確かに今週は俺もきつかったわ」

ネクタイを緩めながら、成瀬も眉間に皺を寄せた。
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