社内恋愛症候群~イジワル同期の甘い素顔~
翌週の木曜日の午後。
私は若林くんと一緒に聖学園を訪れていた。
「すみません。滝本さんも忙しいのに」
私の隣で車を運転しながら、若林くんが申し訳なさそうに言う。
「いいのよ。私もどうなったのかちょっと気がかりだったから」
先月あれからすぐに、聖学園には引き継ぎのご挨拶をかねて若林くんと一緒に出向いた。
担当が変わることを伝えると「とても残念だ」と言ってくれたことで、自分のやってきたことがすこしは認められたような気がしたのを思い出す。
引き継ぎが終わって若林くんは順調に商談を進めていた。きちんと相手とのやり取りをし、短い時間だったが、彼の能力の高さや、持ち前の誠実さできちんと信頼を勝ち取っている。
契約の内容もブラッシュアップされていたし、私も出来る限りの情報を彼に与えて相談にものった。
悔しいが佐山課長の判断は正しかったのかもしれない。聖学園は私と若林くん両方の提案のいいとこ取りができたし、若林くんは大きな商談をまとめるプロセスを経験できている。
私は——すこしの悔しさもあったけれど、自分の仕事を過信していたことを思い知って、初心に帰ることができた。
なにもかも順調に進んでいたように思えたけれど、聖学園の理事長が最後に話を聞きたいと私と若林くん両方を呼び出した。
ここまできて、商談がご破算になるなんてこと……ないと思いたい。いや、大丈夫!
私は脳内によぎった疑念を取り除いて、商談に臨む。
本来こういった難しい商談の場合、ある程度の決裁権のある上司が同行するのだが、相手のご指名が私とあらば行かないわけにはいかない。