今夜、君にラブロマンスをささげよう。
「ーーーー」
「へぇ、流石は女の子だね、器用なんだ」
志月さんが関心した声を上げる。
……チクチク、チクチク。
針を持ったわたしの手が規則的に動く。
さっきまで困っていたはずの話題がどうのとか、今のわたしにとってはどうでも良くてーー。
とにかく、わたしってばひとつのことが気になるとそれ以外のことが頭からすっぽ抜けてしまうんだ。
とても単純な性格。
自分でもそう思う。
でも今に限ってはこの性格がとても長所になっている気がした。
「いえ、わたしにはこれくらいしか取り柄がないですし……」
その言葉で、わたしはハッとした。
今さらだけれど志月さんって彼女さんとかいないのかな。
ふと、そう思ったから。