バウンス・ベイビー!
次に顔を上げたときには窓の外は真っ暗だった。
疲れきった指をいたわりながら、私はヨロヨロと立ち上がる。時刻は6時すぎだ。さすがにもう行く準備をしなければ間に合わない。凝り固まった肩をごりごり言わせながら、深い呼吸をした。
カーテンをきっちりと閉めて、その場で伸びをする。
ブルーライトのせいで視界が不良だ。一度顔を洗いなおしてから化粧をすることにした。洗顔のあとにホットタオルを顔にのせてしばらく肌と瞳を休憩させる。肌がもっちりとなったところでタオルをとり、化粧水をつけてクリームを塗りこんだ。
エアコンじゃないので部屋の空気は乾燥していない。だけど肌の曲がり角ではある年齢なのだ。手入れは怠ってはならない。誰に見せるわけじゃなくても、自分の為に手入れをしよう。
何をしてもどう動いても、さっきまで書いていた濡れ場が頭の中をよぎっていた。鬱陶しかったけれど仕方がない。最後まで書き上げて完結させてこその趣味だ。そう思って苦手なところでも頑張らねば。
「でも、マシになったよ、絶対に」
鏡の中の自分にそう声をかける。マシな文章がかけたはずだ。濃厚になってしまったキスシーンには勝てないかもしれないが、変ではないくらいのものが。
眉を書き足して、肌の表面はパウダーをのせるくらいにする。たまにはちゃんとしようと思って、仕事場ではしないアイラインをかいてマスカラで睫毛を持ち上げる。
「よし」
ぼやけていた顔の線がハッキリと完成したところで髪を下ろして櫛を通し、黒いタートルネックとブルージーンズ、それから白いダウンコートをきて、出発する準備が整った。