鋼鉄の翼―ゾフィエル
ほとんど体に密着させていたような翼を大きく広げ、空気への摩擦を作り、減速した。

ホバリングシステムで姿勢を維持し、背後を振り返る。

空飛ぶ化け物エイは、尾から頭へ大穴を開けられ、今まさに落下していた。

噴射される青い血液が、空の濃度を偽りに高める。

ゴーグルに表示されるカーソルが、モンストルの生命活動をサーチし……DEDと判断した。

ほくそ笑む。

「モンストル、撃墜。こちらヴァルヌス機、モンストル撃墜」

無線へ報告を入れた――直後、

『んのっ、バァッッタレ!!』

「!?」

スピーカーから怒声が爆発した。

『ヴァルヌスてめぇっ、音速の壁に〝ゾフィエル〟の装甲が持たなかったらどうすんだっ!! ダぁホが!!』

「しかしっ!!」

国の敵は落とし、こちらの被害はない。

そんなに怒鳴ることもないだろう。

上司は、唸った。

『あーあー、俺ぁ心が狭いんだよ。とっとと帰投しろ。超音速を支配したヴァルヌス少佐を、どいつもお待ちかねだ』

「ふ……了解」

そして私は、再び翼を翻した。

この白銀で、この鋼鉄で、私は空中都市を守る。

〝ゾフィエル〟――我が翼に懸けて。
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