社内恋愛症候群~小悪魔な後輩君に翻弄されて~
それを隣から颯真が覗きこんだ。

「すごくいい匂いですね、今作ってるのって?」

「アクアパッツァよ。あ、一応ね、お肉も準備してあるから。買ってきたものだけど」

魚介類も好きだったはずだが、若い男の子だ。お肉の方がよかったかもしれない、と仕事帰りに思いつきローストビーフも駅前で買ってきた。

「どっちも大好きですよ」

そう言いながら私の背後に回り、ゆっくりと抱きしめてきた。

「早く食べたい」

耳元での熱い吐息交じりの言葉に思わず「なにが?」って聞きそうになってしまう。

彼は私を惑わすのがうまい。つき合い始めて以降、なんともこうやって誘惑されてきたのだから。

——いや、つき合う前からそうなのかもしれない。

慌てて煩悩を振り払うと、私は顔を後ろに向けて軽く睨んだ。

「つまみぐいはダメよ。もうすぐだからもう少し待ってて」

それに悪びれもなく「はい」と笑いながら返事をし、私の頬にキスをした彼は、宣言通りお皿を出してくれたり、洗いものをかって出てくれたりと、料理を手伝ってくれた。
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