社内恋愛症候群~小悪魔な後輩君に翻弄されて~
——結婚してください。

飾り気のないその言葉が、私の胸にダイレクトに届いた。

頭の中では「早すぎるし、いきなりすぎる」ともうひとりの自分が警告する。だけど、私の心はもう決まっていた。

「私も颯真以外は考えられない」

「だったらすぐに、サインして!」

「今はダメ」

私の言葉に、颯真が顔を曇らせた。私は誤解を解くために、慌てて言葉を続ける。

「ちゃんと、お互いの家族に会って報告してからにしましょう。私が、こういう手順をちゃんととる女だって、冒険できないって、知ってるでしょ?」

私の言葉を聞いてもなお、不満気だ。ため息をついて首を振った。

「たしかに、それでこそオレの好きになった貴和子さんです」

「ごめん、融通が利かなくて」

謝る私の左手をとって、薬指にキスをした。

「今日は予約で我慢します」

キスされた薬指の甘い感覚が、私をときめかせる。

ドキドキと胸が音を立てる。不意に自分のこの気持ちを伝えたくなった。

今日は彼の誕生日だ。普段なかなか伝えられない言葉も伝えられそうな気がする。

「颯真……大好き」
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