社内恋愛症候群~小悪魔な後輩君に翻弄されて~
現に、その場で「では、詳細を連絡しますから」と言われて連絡先を聞かれた。

それまで彼の連絡先を知っていたけれど、彼には教えていなかった。

彼への感情に戸惑っているのならば、これ以上深入りするべきじゃない。

それなのに私は『行けそうなら……』と言った手前、仕方がない、そう自分に言い訳して彼に私の連絡先を気がつけば教えていた。

飲み会の詳細ならば、滝本さんや河原さんに聞くことだってできたのに。

そのうえ、今日の会をどこか楽しみにしている自分もいる。

私は説明のつかない、自分の行動と感情に戸惑いながら、会社へと戻った。

そして早く今日の仕事を終わらせてしまおうと思っていた。

自分のデスクのある、営業企画部のフロアに足を踏み入れ、面談ブースの前を横切る。

そのときわずかに開いた扉から、女性の不機嫌な声が聞こえてきた。

「どうして、私が蓮井さんに色々指示されないといけないんですか?」

その声の主は、三木さんだ。

「そんな風に言うもんじゃない」

そしてそれを宥める、山崎部長の声が続けて聞こえた。

面談室での話を盗み聞きするなんてタブーだ。

それは十分理解しているつもりだったけれど、足が張り付いたように動かない。

「私のほうが、企画部でのキャリアはあります。なのに後から来た人に……社歴が長いだけの人に、あんな風に我が物顔で振るまわれるのには我慢なりません」

私を非難する三木さんの声が耳に届くたび、に気持ちがどんどん沈んでいく。

奥歯を噛みしめて肩に掛けている、バッグの紐を強くつかむ。

そんなつもりなんてなかった。ただ自分の思うように、すこしでも成果が出るように仕事をすすめていただけだ。
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