社内恋愛症候群～小悪魔な後輩君に翻弄されて～

「余ったら、この女性陣をもっと静かなバーに出もお連れして。悪いな蓮井。せっかく来てくれたのにぜんぜん話もできなくて」

「お気遣いなく。奥様がお待ちなんでしょう」

「言うなってば。俺の威厳がなくなるだろう」

私の言葉に、照れた様子の深沢部長は本当に奥さまを大切にされている。確か……社内恋愛だったはずだ。

さっと、コートをはおりすぐに出て行ってしまった。

しっかり盛り上げて、支払いも済ませてみんなが気を遣わないように、会場を出る。

本当に上司として、理想だ。

そして、ちゃんとわかっている。この場で誰にお金を渡せしておけばいいのか。

そういった意味では、やっぱり若林くんが適任だと私も思う。

だって、今も他の人の注文を聞き、酔いのまわった人たちに言われて、曲を入力している。

——本当に気が利く。

滝本さんもそう言っていた。

私だけに親切なわけじゃないんだと、わかっていたつもりだったけど、現実を目の当たりにした。