社内恋愛症候群~小悪魔な後輩君に翻弄されて~
走り去っていくタクシーをふたりで見送ると、若林くんが隣の私に向き直る。

「さぁ、送っていくって話ですけど」

「あ、本当にひとりで平気だから。全然酔ってないし」

わざわざ送ってもらう方が、気を遣って面倒だ。私が歩き出そうとしたとき、先に若林くんが歩き始めた。

「そうですか……、じゃあもう一軒付き合ってください」

「ちょっと、電車まだ大丈夫なの?」

慌てて彼について行く、こんな風に歩き出されてしまって。断るタイミングを失ってしまった。

「そんな心配より、どこに連れて行かれるか心配じゃないんですか?」

悪戯じみた顔で聞かれて、思わずその表情に惹かれてしまう。

うっかり一、二秒ほど見とれてしまって、我に返った。

「私、まだ行くなんて……」

「はい、時間切れです」

隣でピタッと足を止めた若林くんは、すでにお店の扉に手をかけていた。

「ちょっと……」

「どうぞ」
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