社内恋愛症候群~小悪魔な後輩君に翻弄されて~
私の言葉にかぶせるように、扉を開けて私が中に入るのを待っている。

「はぁ……仕方ないわね」

「まぁ、そう言わずに。オレにつき合ってくださいよ」

肩をすくめた彼が、嬉しそうな表情で髪をかき上げた。

そんな彼の隣で「仕方ない」なんて言いながら、私は胸の高揚感を抑えることができずにいた。

彼のスマートな強引さが、今の私にはとても心地よかったのだ。

灯りの絞られた店内は、長いカウンターが最初に目に入る。

スタンディングタイプのバーのようで、週末のせいか多くの男女が楽しそうに会話とお酒を楽しんでいた。

足元にはブルーの照明が埋め込まれていて、落ち着いた中にも、洗練された雰囲気が醸し出されている。

バーテンダーは、シェイカーを振りながら「いらっしゃいませ」と私たちに声をかけた。

若林くんは、慣れた様子でスタスタとカウンターのあいた場所へと向かう。

置いて行かれそうになった私は、カウンターに立った彼の横に慌てて並んだ。

「貴和子さん、なににしますか?」

カウンターにもたれて、私に体ごと向いて尋ねてくれる。

「えーと。じゃあ、コスモポリタンで」

軽く頷いた若林くんが、顔をあげて目でバーテンダーを呼んだ。
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