社内恋愛症候群~小悪魔な後輩君に翻弄されて~
「でも、自分の居場所じゃないって言われたから新しい場所でも頑張ろうって。自分のできる限りやってきたつもり。でも、それも、周りにとっては全然で……」
私なに言ってるんだろう。
こんなこと、今ここで話をしてもどうしようもないのに。
「蓮井さん——」
「ごめん、なにも言わないで」
今ここで、彼になにか言われたら余計にみじめになるような気がして、彼の言葉を遮った。
彼の顔を見られずにいると、カウンターに置いてあった私の手に、彼の手が重ねられた。
そのぬくもりが、すごく優しくてつっぱっていた気持ちがとたんに萎えて、頼りたくなってしまう。
どんな言葉をかけられるよりも、そのぬくもりに絆されたい衝動に駆られる。
黙りこんだ私の手を握ったまま、彼はバーテンダーにお会計を告げた。
きっと面倒だと思ったんだ。せっかくの週末なのに、私の愚痴につき合わされて、嫌になったに違いない。
私は、彼の手をほどいてバッグから財布をとりだそうとした。
「ここはいいです」
「そんな訳には、いかないわ」
彼に払ってもらう理由などない。
「本当に、少しはオレの言うことも聞いてください」
今までにないほど、強い口調で言われた私が、あっけに取られているうちに、彼はさっさと支払いをすませてしまう。
「行きますよ」
「え……」
有無も言わさず手を引かれて、店を出る。
バーテンダーの「ありがとうございました」の声は最後まで聞き取れなかった。
私なに言ってるんだろう。
こんなこと、今ここで話をしてもどうしようもないのに。
「蓮井さん——」
「ごめん、なにも言わないで」
今ここで、彼になにか言われたら余計にみじめになるような気がして、彼の言葉を遮った。
彼の顔を見られずにいると、カウンターに置いてあった私の手に、彼の手が重ねられた。
そのぬくもりが、すごく優しくてつっぱっていた気持ちがとたんに萎えて、頼りたくなってしまう。
どんな言葉をかけられるよりも、そのぬくもりに絆されたい衝動に駆られる。
黙りこんだ私の手を握ったまま、彼はバーテンダーにお会計を告げた。
きっと面倒だと思ったんだ。せっかくの週末なのに、私の愚痴につき合わされて、嫌になったに違いない。
私は、彼の手をほどいてバッグから財布をとりだそうとした。
「ここはいいです」
「そんな訳には、いかないわ」
彼に払ってもらう理由などない。
「本当に、少しはオレの言うことも聞いてください」
今までにないほど、強い口調で言われた私が、あっけに取られているうちに、彼はさっさと支払いをすませてしまう。
「行きますよ」
「え……」
有無も言わさず手を引かれて、店を出る。
バーテンダーの「ありがとうございました」の声は最後まで聞き取れなかった。