鬼常務の獲物は私!?



それで神永常務は仕事に戻らざるを得なくて、私は数分の滞在で営業部に帰ることになる。

比嘉さんが来てから、常務室の雰囲気がいつもと違ってピリピリしているというか……でも、仕事だから仕方がないし、『後で慌てないためにも』という彼女の言葉はもっともなので、私は出て行くしかなかった。


湯気立つ湯のみに視線を止めて、ぼんやりとクールビューティな比嘉さんのことを考えていたら、「出た」と星乃ちゃんに言われてハッとした。

なにが出たのかと思ったら、いつの間にか星乃ちゃんの手の上には水晶玉が乗っていて、占いをしていたみたい。

それで、今度はどんなお告げを聞かされるのかと、少々身構える。


「猫じゃ……」

「猫?」

「おぬしらの仲を邪魔しておるのは、メス猫じゃ。牙を剥き爪を立てている姿が見える」

「星乃ちゃん……喋り方がなんか変だよ……」


メス猫と言われて首を傾げる。
うちの太郎くんは、オス猫なんだけど。

邪魔をしていると言われたら、そうかもしれない。

猫嫌いな神永常務は今でも太郎くんと別れろと無理難題を言ってくるし、なにがあろうと別れるつもりはない私の気持ちにも変わりはないから。

でも、そもそも太郎くんが邪魔をする依然に、交際なんか初めから求められていなかったと、つい最近気づいたばかりでもある。

私は慰み者らしいから……。

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