鬼常務の獲物は私!?



今は私のことを構ってくれる常務でも、一度抱かれてしまえば飽きて、捨てられるかもしれない。

そういえば、社長室に謝罪に行った時も、『狩り』とか『火遊び』とか、女性にしたら嬉しくない言葉が出ていた。

比嘉さんの言う通り、常務は私を恋愛対象ではなく、慰み者として見ているのだろう。


無意識に溜息が口からこぼれ落ちていた。

心がモヤモヤするのは、比嘉さんの存在と、もうひとつ原因がある。

神永常務のことを好きなのかもしれないと思い始めて、困っているからだ。

前々から常務の容姿は素敵だと思っていた。

恐い人だから恋愛感情は湧かないだろうと思っていたのに、常務と一緒に時間を過ごす内に、恐くなくなって……。

私のためにわざわざココアを用意してくれる優しさも、手作りクッキーなんかを喜んでくれる可愛らしさも、ヒーローみたいに子供を助けるカッコイイ姿も見てしまった。

後は惹かれる一方なのかもしれないが……心にブレーキをかけてしまうのは、きっと慰み者という言葉のせい。

好きになってしまったら、抱かれてその後にポイと捨てられるだけで、そんなの悲しすぎる。

だからやっぱり、これ以上気持ちが揺らがないように、神永常務とは距離を置いた方がいい気がする……そう考えても、呼び出されてしまうのだけれど……。


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