鬼常務の獲物は私!?
ハンドルを握る常務に、いつもとは違うカッコよさを感じていた。
スムーズにシフトチェンジを繰り返す大きな左手を見つめていると、触れたくなってしまう。
その衝動を押さえて、視線はスーツの腕をたどり、広い肩幅からネクタイの結び目、ワイシャツの襟へと移動していた。
一般的にスーツは男性のカッコよさを引き立てるものだと思うけれど、神永常務の場合は逆で、常務の魅力でスーツが引き立てられているように感じてしまう。
さらに視線を上へと移動させ、喉仏とフェイスラインを捉えると、口から自然と溜息が。
男らしくて素敵……。
神永常務は綺麗と表現したい顔立ちをしているが、そこに女性っぽさは全くなく、男らしい魅力に溢れている人だ。
唇も耳も鼻も、羨ましいほどに形が整っているし、切れ長二重の瞳はいつも力強く輝いて……。
半開きの口でつい見惚れていたら、赤信号で車が止まり、常務の視線が私に流された。
「そんなに見るな。運転しにくい」
言われた言葉は文句なのに、口の端は上向きで、嬉しそうにも見える。
「すみません」と一応謝って、助手席の窓の方を向いたのは、赤い顔を隠すため。
運転に集中していたはずなのに、見惚れていたことに気づかれるなんて……それが恥ずかしかった。