鬼常務の獲物は私!?
常務室を出た後は、エレベーターで地下1階まで下りた。
私が滅多に来ることのないこの場所は、地下駐車場。
常務が「乗せてやる」と言ってくれたので、ありがたく送ってもらうことにした。
その車とはやはり白のベンツで、後部席のドアを開けようとしたら、「助手席に乗れ」と言われてしまう。
高山さんがいないので、運転手は神永常務……。
そのことに少々不安を覚えたら、顔に出てしまったのか、ジロリと睨まれた。
「俺の運転技術はまともだ」
クリスマスイブのデートで、この車に乗せてもらった時、高山さんは常務の運転技術を普通と評価していた。
でも、『私よりは下手です』とも言っていたし……。
「くそ、高山のせいで俺が下手だというイメージが着いてしまった……。いいから、早く乗れ」
「は、はい」
どうやら常務を不機嫌にさせてしまったようで、慌てた私はつまずいて、転がり込むように助手席のシートに乗り込んだ。
辺りは薄暗く、夜の気配がし始めた街を、白のベンツはスムーズに走っていた。
運転が下手くそではないことを理解して、緊張が解ける。
すると今度は、別の意味でドキドキと鼓動が速度を上げていった。