鬼常務の獲物は私!?



「ノースティン・ホテルの和食レストラン。ミシュランで三つ星を獲得している店だから、旨いぞ。今日の夕食はそこにしよう」


ということは……また私に、ご馳走してくれるみたい。

和食と聞いて思い浮かべるのは、豚の生姜焼き定食やサバの味噌煮定食。天丼ときつねうどんも頭に浮かんできた。

ホテルの三つ星レストランなんて入ったことがないからイメージがつかないけれど、多分、私の頭に浮かんだ料理はメニューにないのだろうということは想像できた。

そんな高級なお店に連れて行ってもらえるのは申し訳なくもありがたいことだが、今の私には「行けません」と答えるしかない。


「お気持ちは嬉しいのですが、こんな格好で、どこにも行けないのですけど……」


コートの中は事務の制服で、ブラウスのボタンが取れているということを、常務はもう忘れてしまったのだろうか。

私よりも記憶力が悪いのではないかと心配の目を向けたら、常務はふんと鼻を鳴らして言った。


「そんなもの、買えばいいだろ。
ホテルの中には服屋も入っている」

「え……そんなもったいないこと、できません!」

「俺が払うんだから気にするな。服を買って、夕食を食べて、その後はホテルに泊まるぞ」

「ええっ⁉︎ もっとできませんよ!」

「うるさい。つべこべ言うな」


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