Christmas Rose



花は散り、新緑の季節が訪れようとしている頃ー



アリスは二ヶ月間の花嫁修行が終わろうとしていた。



男として育ってきたアリスは、女としての振る舞いを一から勉強し直した。



今思えばこの二ヶ月間が今までで唯一、こんなに穏やかな気持ちで過ごせた時だった。

政治、剣術からこんなに離れたのは初めてだった。

そして、家族からも。

ソフィアは幾度となく気遣いアリスを訪ねて来ては短い時間の他愛もない会話を交わした。しかし、仲の良かった姉妹の間には目には見えない大きな溝が出来てしまった。


父には何度か呼ばれて時期夫となるシド王子の話を聞かされた。


そして、母とは最期の日まで言葉を交わすことはなかった。



いよいよ明日は、ギルティに向けて出国する日だ。


「…アリス。」

窓辺に座り、ぼんやりと外を眺めていたらレオがやって来た。

「…レオ。どうした?」


レオは何も言わずに、アリスの隣に立った。


「…本当に行ってしまうんだね。」

「ああ…もう決心はついた。心残りもない。」


レオとは本当の兄弟のようだった。

唯一、アリスの話し相手になってくれたレオとの別れは辛い。


「俺は立派な騎士になるよ。この王宮は俺が守る。」

「レオになら、任せられる。」


泣き虫で、臆病者だったレオも立派になった。

アリスは首からペンダントを外してレオに渡した。

「これは…」

「叔母上から頂いたものだ。いつも身につけていた。ギルティにはこの国のものは例え糸切れ一本でも持ち込めない。レオに持ってて貰いたい。」

レオはペンダントを受け取るとギュッと握りしめた。
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