Christmas Rose



翌朝、朝食をゆっくりと取り、出発の準備を整えた。


豪華なドレスに着替えて、城の前に用意されている馬車へと向かった。


門には、父と母、それにフィオナがアリスの見送りに出ていた。


「…アリス、元気で……」

涙ながらに言うフィオナを、アリスはそっと抱き寄せた。

振り返り、慣れ親しんだ城を見上げた。


そして、ゆっくりと瞳を閉じた。


レオはきっと立派な騎士になる。

アレン王子はフィオナを幸せにし、そしてこの国ものみんなが幸せだと思う国にしてくれる。


星空も目に焼き付けた。



もう、思い残すことはない。


目を開けると、アリスは馬車へ乗り込もうとした。その時、


「…アリス。」



母の消えそうな声が、確かにアリスの耳に聞こえ、脚が止まった。


「…身体には、気を付けて……」


「っ……」


アリスはその場に立ち尽くした。

背後から、母のすすり泣く声が聞こえる。



アリスは振り返らず、馬車へ乗り込んだ。


「出立!!!」



大勢の人に見送られて、母国を後にした。

みるみる小さくなっていく城を、馬車の窓から眺めた。


振り返られなかった。


振り返ったら、泣いている母を見てしまったら…


初めてだった。

母が優しい言葉をかけてくれた。


私を想って泣いてくれた。


アリスは一人、静かに馬車の中で涙を流した。





< 17 / 190 >

この作品をシェア

pagetop