Christmas Rose
翌朝、朝食をゆっくりと取り、出発の準備を整えた。
豪華なドレスに着替えて、城の前に用意されている馬車へと向かった。
門には、父と母、それにフィオナがアリスの見送りに出ていた。
「…アリス、元気で……」
涙ながらに言うフィオナを、アリスはそっと抱き寄せた。
振り返り、慣れ親しんだ城を見上げた。
そして、ゆっくりと瞳を閉じた。
レオはきっと立派な騎士になる。
アレン王子はフィオナを幸せにし、そしてこの国ものみんなが幸せだと思う国にしてくれる。
星空も目に焼き付けた。
もう、思い残すことはない。
目を開けると、アリスは馬車へ乗り込もうとした。その時、
「…アリス。」
母の消えそうな声が、確かにアリスの耳に聞こえ、脚が止まった。
「…身体には、気を付けて……」
「っ……」
アリスはその場に立ち尽くした。
背後から、母のすすり泣く声が聞こえる。
アリスは振り返らず、馬車へ乗り込んだ。
「出立!!!」
大勢の人に見送られて、母国を後にした。
みるみる小さくなっていく城を、馬車の窓から眺めた。
振り返られなかった。
振り返ったら、泣いている母を見てしまったら…
初めてだった。
母が優しい言葉をかけてくれた。
私を想って泣いてくれた。
アリスは一人、静かに馬車の中で涙を流した。