やさしい先輩の、意地悪な言葉
……また、隆也と神崎さんを比べちゃった。


……でも。


もし彼氏だったらきっと大事にしてくれる神崎さんと、付き合ってた頃も今も、お世辞にも大事にしてくれてるとは言えない隆也。

もし神崎さんみたいな人が彼氏だったら……なんて考えが、もちろんただのたらればだけど……そんな思いが膨らんでしまってるのも事実で。



「お待たせ」

ぼーっとしていると、神崎さんが手にトレーを持って戻ってきてくれた。
トレーの上には、飲みもののカップがふたつと、ハンバーガーの包みが三つ、ポテトがひとつ乗っていた。


神崎さんは、私の正面に座りながら。

「なんでも好きってことだったから、新商品のおいしそうなやつにしてみたよ」

「あ、ありがとうございますっ」

「ハンバーガー、俺はふたつ買ってきちゃったけど、瀬川さんひとつてまよかった?」

「はい、ありがとうございますっ」

「飲みものはさっき映画館で飲んだから、小さいサイズにしたけどよかった?」

「はいっ、ありがとうございますっ」

「ポテトも食べれるようならいっしょに食べよう」

「はいっ、ありがとうございますっ!」

「そんなに感謝しなくても。瀬川さんはほんとにいい子だね」

「へっ、あ、あの……」

神崎さんはやさしく笑って、ハンバーガーをひとつ手にし、包みを開け始める。


「……か、神崎さんがたくさん気を遣ってくださるからですよ。だからお礼を言うんです」
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