やさしい先輩の、意地悪な言葉
私がそう言うと、神崎さんは「そうかな?」と小さく首をかしげる。

そして。

「俺からしたら、瀬川さんの方が気を遣ってくれてると思うよ」

「え?」

今度は私が首をかしげる。
神崎さんは続けた。

「会社でさ、朝の掃除もそうだけど、みんなが使うキャビネットの整理して書類見やすくしてくれたり、営業の俺たちにお茶淹れてくれたり、最後まで残って洗いものしたりしてくれたり……」

「い、いえ。そんなのは大したことじゃ」

「でも、やってくれるの瀬川さんだけだよ。いつも感謝してるし、すごいなって思う」


す、すごい……? そんな意外なことを言われて、言葉に詰まる。


でも、もちろん……うれしくて……。



……けど、私がなにも言えずにいると、神崎さんが突然こんなことを言ってきた。
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