強気な彼から逃げられません




「天羽怜」

「は?」

「俺の名前。天羽 怜。27歳独身。で、お前は?」

突然、 自分が名乗ったんだからお前も名乗れ、とでもいうように顎で指示されて、一瞬むかつかないわけではなかったけれど、その強い口調に気圧された。

「須藤芹花」

思わず呟いた。

「で? 何歳?」

「25歳」

年齢までも、言ってしまった。

「もちろん、独身だよな」

「うん……」

もちろん、っていう前提に腹が立つようにも思えたけど、まあ、確かに独身だし恋人もいないし好きな人すらいないし。

ため息とともに肩をすくめた。

「付け加えておきますと、恋人すらいない、寂しいOLでございます」

ふんっと顔をしかめて見返してやると、にやりと笑った怜さんは

「上等」

そう言って、私の額を軽くこづいた。

「いたっ」

どうしてそんな事をするのか、というよりも、どうしてタクシーに相乗りしているのか。

わからない事だらけで混乱する私の気持ちを見透かしたかのように、怜さんはくすりと笑うと、助手席に座っている男性に声をかけた。


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