強気な彼から逃げられません




その声は、少し低くて、私の胸にとくんと響いた。

そして、なんて甘くて艶やかな表情。

どこか女の子を惹きつけてやまない雰囲気は私にはまったく免疫のないもので、途端に私は緊張感でいっぱいになった。

「えっと……」

素直に名前を言っていいのかどうか、ためらってしまう。

初対面で、見るからに女受けのよさそうなこの男。

『れいさん』

果たして、自己紹介してもいいんだろうか?

名前を言おうとして開けた口を閉じて、私は目の前の男を意味なく見つめていた。

仕立てのいい細身のスーツをまとい、水色のシャツに紺地のネクタイ。

ネクタイのストライプは黄色?

車内のライトじゃよくわからないけど。

とにかくそれが彼に似合っているのは確かで。

二重の瞳は少し切れ長で、しゅっと鋭い顎を強調するかのような形のいい唇が、バランスよく収まっている顔

女の子なら誰でも惹かれるんだろうなあと。

ぼんやり考えていると。

「あもう れい 」

目の前の男が呟いた。


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