強気な彼から逃げられません
どう答えていいのかわからないまま首を傾げていると、
「まあ、一言で言うと。 俺はずっとお前の事が気に入ってたってことだ」
「……嘘」
「嘘じゃない。お前の事、どんどん好きになってた」
辺りの暗闇が、いくつもの街灯によって照らされているとはいえ、ほどよく落ちた夜の帳は、私の頬の赤みをきっと隠してくれているはずだ。
時折走り去る車の音も、私の激しい鼓動の激しい音を消してくれるはず。
それが何だかありがたいと意味なく考えてもなお、 不自然にがくがくとした気持ちは抑えられない。
「えっと……その。私の事が、えっと」
しどろもどろになる私を見ながら、ふっと息を吐いた怜さんは、私の目をじっとのぞきこんで。
「駅で見かける度に俺の好みの女だなって思いながら見てたんだ。 だけど俺の視線に気づく事もないし、諦めるしかないかって思ってたけどな。
今日、駅で偶然目が合った時、もうどうしようもなかった」
「どうしようもって……」
「そう、無意識のうちに体は動いて走っていた。この一年、見続けてきて、こんな夜に偶然会って。 今しかないって思ってさ。
俺の強気な本性むき出しで動いてみた」
「動いてみたって……そう言われても」
思いがけない言葉ばかりが続いて、私の体は限界。
突然の展開を受け入れられる余裕は許容量いっぱいで溢れ出そうだ。
「俺の事、おかしな男だって思ってるだろ」
「おかしな男って、そうだね……思ってるかも」
「だよな。俺、自分でも自分がおかしな男だって思う。 見ず知らずの女に俺が連れまわされたらそれだけで恐怖だし」
息を吐きながらそう呟く怜さんの表情は、どこか不安げだ。