強気な彼から逃げられません



耳元に寄せられた唇は、私の耳たぶを一瞬さまよって、そしてぱくっと噛んで。

「早く部屋に帰ろう」

追い詰められたような声が落とされた。

「うん……」

怜さんの甘い声に、私の体はかっと熱くなって、俯いてしまった。

怜さんの部屋に帰って、そして……。

考えるだけで恥ずかしくなるけど、それ以上に私も怜さんと早くふたりきりになりたい。

そんな自分に「きゃー」と照れてしまい顔をあげられずにいると、すっと視界に入って来たのは男性用の高そうな靴。

驚いて視線を上げると、

「公共の場でいちゃつくな。恋人を連れてとっとと帰れ。月曜日からは忙しくなるから、週末は存分に恋人を抱き潰して充電してこい」

私達を見ながら、呆れた顔をした男の人がいた。

私達よりも年上に見えるその人の胸元にも弁護士バッジが見えた。

怜さんの事務所の人だろうか。

「あ、すみません」

私は慌てて怜さんから離れようとしたけれど、そんな私の動きなんて意に介さず、怜さんは相変わらずその胸に私を抱きしめたまま口を開いた。

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