強引同期と偽装結婚することになりました

チーズナンはピザみたいにチーズがトロトロしていていつも、ここに来るとプレーンのナンにするかチーズナンにするか悩む。

だから優木くんと来ると二つ頼んでシェアしようといつも二つ注文するのがお決まりになっていた。


「チキンカレーセット、お待たせいたしました」


料理が運ばれてくるまで優木くんはいろいろ話してくれたけれど私は相槌を打つだけ。

でも、民族衣装に身を包んだ綺麗な店員さんが料理を運んできてくれた瞬間、私は涙が溢れてきた。


「おい、篠宮。どうした？なんかあったのか？なんで泣いてんだ？」


ガタッと立ち上がり、向かいの席に座っていた優木くんが私の隣に来てそっと肩を抱いてくれた。その優しさがまた余計に涙を誘う。


「なんかあったのか？俺で良かったら聞くから言ってみな。話すだけでも楽になるかもしれないだろ？仕事のことか？企画書で悩んでんのか？」


とりあえず肩は離されたもののまずは食えよと運ばれてきたナンにチキンカレーをつけて口の中に優木くんが入れてくれた。

ほらっ、あーんと食べさせてもらう恥ずかしさは少しだけ残っていたけれど空腹には勝てない。

ナンを一口噛むと美味しさと嬉しさで余計に嗚咽が漏れたけれど、優木くんはほらっ、食えとナンをちぎってカレーにつけては私に食べさせてくれた。