もっと、キスして
「なあ。」
私が波打ち際で水をパシャパシャして遊んでると後ろでしばらく何も言わなかった桐谷先輩が口を開く。
「ん~?」
私は振り返りもせずに尋ねた。
「お前、俺の名前まだ1回も呼んでねぇだろ。」
そうだっけ?
桐谷先輩の方を向いて名前を呼ぶ。
「桐谷先輩。」
「はあ?お前なめてんのか。」
なんで?意味わかんない。
「泰成も大貴も呼べて俺だけ呼べないわけじゃねぇだろ。
俺の名前忘れたのかよ。」
「人の名前忘れるほどばかじゃないし。」
「じゃあ呼べ。」
「桐谷さんとか桐谷くんとかでもダメなの?」
「完璧にナメてるよな俺のこと。」
なんでそうなんの。
「じゃあ、龍。」
「それじゃあいつらと変わんねえ。」
別に変わらなくていいじゃん。
「呼べ。
なんて呼べばいいか分かってんだろほんとは。」
龍青。
名前を呼ぶって、ただそれだけのことなのに。
その名前を呼んだらこの人から逃げられなくなるような気がした。
どうやったら名前呼ばせるだけでこんなドキドキさせれるんだろう。
桐谷龍青という人は、不思議なほどに魅力的だった。