もっと、キスして



「普通の服でいいの?」


「あ〜、“みんな”はすごいきっちりした格好でくるね。」


きっちりした格好ってまず何?


私の表情を読み取ったのか泰成は


「例えば…女の人ならドレス、とか。着物、とか。」


ドレスに着物って。

どんな大物なのよ。

まじでこの3人何者なの。


「そんな高いもの持ってないよ〜っ。」


「本当それだよね。これだから金持ちは。」


私が冗談っぽく言ったら、


「誰のこと言ってんだよ」


って大貴に突っ込まれた。


アンタたちでしょって言いたくなったけどさあね〜って誤魔化しとこう。



でもドレスか着物って…。


お金かかるなあ。



お金かかるのが嫌でいつもちゃんと弁当作って持ってくるような私には、

ドレスや着物なんて別世界のものにしか思えなかった。


「お金なら俺出すよ。」


大貴はサラッとそんなことを言う。


「や、…私パス。」


大貴には申し訳ないけど、正直今の私にはそんな余裕ない。


手持ちが足りないとかじゃなくて、いまあるお金は全部、あの家を出るためのお金。



一刻も早くお金貯めてあの家を出ないと、

またいつあの人のいいようにされるか分かんないから。


いまバイトほぼ毎日必死で頑張ってるのはそのためなんだし。


そのお金を削ってまでドレスを借りようとか…

とてもじゃないけど思えない。


ちのの残念そうな顔を見たら胸が痛んだ。



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