Secret×Secret
「人の男を横取りする女、だっけ?」 

意地悪そうにそう言う目の前の男は明らかに私の反応を楽しんでる。

「冗談。さっきからずっとでかい声で話してたから。」
「んなっ・・・!聞こえてたんですか??」
「あんなでかい声で話してたらそりゃあ聞こえるだろ。お前の今までの恋愛遍歴までしっかり。」
「・・・!」

恥ずかしすぎる!
今まで私まともに恋愛してきてない事まで全部筒抜けじゃん。
かぁっと赤くなる顔を隠すように正面を見てグラスに残ったハイボールを一気に流し込む。

「マスター、お会計お願い!」

とりあえず帰ろう。
明後日からの仕事は不安だけどこの場からとりあえず逃げたい。
現実逃避したい。

私がそう言うとマスターは調理場の中にお会計の準備に入っていった。

「帰ります。」

そう言って鞄を持って席を立った瞬間ぐいっと腕をひかれた。
恐る恐るその腕を辿るといつもと同じ、でもいつもとは違う手塚さんの顔

「なぁ、だったら俺とも遊んでよ?慣れてるんでしょ?」

あまりにも似合わないその台詞をはいた意味がわからなくてはぁ?と間抜けな声をあげてしまった。
なんとなく意味がわかって抗議しようとした私の唇は声を出す前に塞がれてしまった。

それが彼の唇だと気づくのに時間がかかった。


< 9 / 12 >

この作品をシェア

pagetop