Polaris
手のひらで、着信音を鳴らしながら震えた携帯を開く。そして、早速メールを確認した。
《ほらー、またそうやって酷いこと言う! ダメだよ。せっかく可愛いのに、そんな事言ったらその可愛さ台無しでしょ》
メール内容を読み終えた瞬間、熱くなる頬。その熱はじわじわと顔中に広がっていった。
「馬鹿じゃないの」
そう言い捨てて、イツキからのメール内容が映し出された携帯画面を睨みつけた。
認めたくはないけれど、文中にある〝可愛い〟という言葉に反応してしまった。
でも、これはイツキの軽い冗談だということは分かっている。だって、私とイツキは、お互いの顔も声も知らないんだから。
《そういう軽い冗談やめてくれない? 本当に嫌。私の顔なんて見たことないくせに》
イライラしながら作り上げたメールをイツキへと送る。
イライラしてしまったのは、イツキの冗談に、というわけではない。いや、イツキのくだらない冗談にも多少はイライラした。だけど、こんなのはいつもの事だ。
いつもの事。そう分かっていて真に受けてしまう自分に一番腹が立った。