Ri.Night Ⅴ ~Final~【全完結】
走馬灯のように駆け抜けていく当時の記憶。
そして、充くんの言葉。
けれど、どれだけ記憶を辿っていっても十夜の姿はどこにも見当たらない。
あの時のあたしは我を失っていて、十夜の顔どころか白狼の溜まり場さえハッキリと覚えていなかった。
けど、覚えていなくてもあたしが十夜を手に掛けた事は紛れでもない事実。
もう、頭が破裂しそうだ。
「これを聞いてもまだ思い出さない?」
「………」
「そう。おめでたいよな。ホント」
ハッと呆れ混じりに吐き出された言葉に、あたしは何も言い返せなかった。
否、言い返す気力がなかった。
そんなあたしを知ってか知らずか、充くんの抑揚のない声が静かに響き渡る。
「なぁ、お前さっき俺に聞いたよな?俺に関係ないって。遥香さんに頼まれたのかって」
それは、あたしにではなく他の人に向けられたもの。
脱力しきった頭を無理矢理上げれば、案の定、充くんの視線はあたしではなく慎へと向けられていた。
「遥香さんはこの事知らないよ。知っててもきっと何も言わない。あの人は優しい人だから」
「………」
「でも、それじゃあ遥香さんが可哀想だと思わないか?遥香さんは留学を先延ばしにしてまで桐谷さんの看病をした。アンタが負わせた怪我の看病を!」
「……っ」
いつの間にかあたしへと向けられていた言葉と視線。
充くんの蔑んだ視線が、真っ直ぐあたしを射抜く。
「それなのに留学するという理由で別れを告げられ、居ない隙に怪我を負わせたアンタが鳳凰妃になった!」
「………」
「なんで遥香さんではなく怪我を負わせたアンタが鳳凰妃になる!?オカシイだろ!!」
「…ぁ……」
怒り狂うその叫声に再び震え始めた身体。
充くんから向けられるハッキリとした憎悪が、今はもう怖くて怖くて堪らない。