Ri.Night Ⅴ ~Final~【全完結】
だが、その願いは凛音には伝わらなかったらしい。


いや、伝わってはいる。

凛音が納得していないだけだ。



今にも零れ落ちそうな涙と、激しく左右に振られている頭。


『嫌だ』と訴えているその瞳が俺の心を揺るがした。


けれど、頷いてはやれない。


一人にさせるのは不安だけど、敵の中に入れるよりはずっといい。





貴兄と約束したんだ。


凛音は獅鷹幹部の兄弟だというだけで狙われる対象になる。


もし妹だとバレた時、命をかけて護れるのなら獅鷹に入ってもいい。


それが獅鷹に入る“条件”だった。


獅鷹に入ると決意した時、俺は貴兄と誓い合ったんだ。


共に凛音を護っていこうと。


そして互いを護り、支え合っていこうと。


仲間の誓い、兄弟の誓いを立てた。


だから怪我だけはさせられないんだ。


何があっても凛音だけは護らなければいけない。


凛音を護る為なら喜んでこの身を差し出してやるよ。


俺の半身を傷付ける奴は誰であろうと許さない。


だから凛音、お前は逃げろ。


逃げてスパイがいる事を貴兄と鳳皇に報告するんだ。


それが今のお前の役目。




それを目で伝えると、俺は奴等に従い歩き出した。


背中から感じる凛音の視線に耐えながら俺は敵地へと足を踏み入れる。


覚悟は決まった。


──さぁ、“D”の皆サン


そのツラ拝ませて貰おうじゃねぇか。
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