俺様黒王子とニセ恋!?契約
私の返しに、静川さんは、そう、と言ってニヤリと笑う。


「あんまり繰り返すから、『気味が悪い』って言った。弓道部引退したタイミングだったし、和心見せつけてカッコつけてるのかってからかったら、憮然としてたな」


見たこともないのに、そんなやり取りをする高校生の頃の二人の姿が、面白いくらい想像出来る。


「で、篤樹は不貞腐れて『まあ、本当に縁が深ければまた逢えるか』って言った。それっきり和歌を口ずさむこともなかったけど……さっきの篤樹見てわかった。『澪つくし』は四宮さんの名前だ」

「え……?」


核心を微妙に逸らすような静川さんの言い方に、静かに静かに胸が騒ぎ始める。
焦らさず教えて欲しくて、私は無意識に身を乗り出していた。
そんな私を、静川さんは面白そうに目を細めた。


「この間言ったろ? 篤樹の好みのタイプは、守ってやりたくなる控え目な子」

「は、はい……」

「決死の覚悟で告白したのに、返事も聞かずに言い逃げしちゃうような子だ」

「……っ……!」


思わず両手で口を押えて、私は大きく目を見開いた。
私の反応に、静川さんはただ満足そうに頷く。


「君みたいな子だよ。四宮さん」


穏やかにそう告げられた。
それなのに、私の心臓は壮大な爆音を放って高鳴り続けていた。
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