俺様黒王子とニセ恋!?契約
そして。


「……シた?」


昨夜の出来事を、どこまでも短く簡潔に確認してくる。
自分でもちゃんとわかっているけど、頷くのがとても怖い。
その仕草一つで、もう何も誤魔化せなくなってしまうのだから。


けれど、私の答えを待たずして、篤樹先輩は身体を起こすと、ベッドの下に脱ぎ散らした服を見下ろした。
そして、ベッドサイドのゴミ箱を見遣る。


「……マジか」


動かぬ証拠を見つけてしまったようだ。
そして、右膝だけ立てて座り直すと、ガシガシと頭を掻いた。


「すみません……」


明らかに後悔しているような篤樹先輩の反応に泣きそうになりながら、私は消え入りそうな声で謝った。
すぐに、は?と聞き返される。


「わ、私が昨夜一緒にタクシー乗ったりしなかったら……」


どうにもならなかったとは言え、私の家に持ち帰って来たりしなければ。


「ああ、そうしたら俺は、どっかの街角で無様に行き倒れてるんだろうな。だから、その辺はむしろ感謝しなきゃいけないんだろうけど……」


自分を落ち着けようとしているのか、意識してゆっくりそう言いながら、篤樹先輩はチラッと私を見遣った。
改めて向けられる視線に、緊張して身体が震えてしまう。


「……お前、誰だ?」


もしかして、と思ってはいたけれど、やっぱり歓迎会で会話したことも覚えられていなかった。
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