俺様黒王子とニセ恋!?契約
私の沈む声に、金子さんの表情も一転する。
私も金子さんも、ほとんど同時に自分の腕時計を見つめた。


「追加分を頒布サンプルに回すとしても、イベント開始時に頒布予定数の三分の一しか用意出来ないってことか……」


ぎりっと歯軋りして、金子さんが逡巡する。
私の耳には、橋本さんの声が追いうちのように聞こえてくる。


「あの……片桐さんはちょうど商談中で、電話が繋がらないそうです。留守電にはメッセージ残してるので、終わり次第帰京するよう伝えてくれる、と……」


もしかしたら最悪の状況でイベント当日を迎えるかもしれない。
そんな最悪の恐怖に晒されながら、私は躊躇いがちに金子さんに報告した。


途端に、金子さんが大きく顔を上げて、私の手から携帯を奪い取った。


「もしもし? 橋本さん、金子です」


その良く通る声をすぐ横で聞きながら、私は金子さんの決断に緊張しながらも耳を傾けた。


「工場に連絡して、あるだけの在庫全て搬出する準備を整えさせて欲しい」


その言葉に、私は無意識にゴクッと唾を飲み込んだ。


「工場の方には、搬出作業に対応出来る職員を残しておけ、と」
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