俺様黒王子とニセ恋!?契約
「イベントまで日が迫ってるのに集中出来ないなら、他のメンバーの士気も下がるし邪魔になる。それだけだ。勘繰りたいなら、好きにしろ」
篤樹は落ち着いた口調でそう言うと、私を一瞥した後、会議室から出て行った。
一人取り残されて、私は自己嫌悪の溜め息をつく。
「……懐かしい。その言い方」
そんな自嘲めいた言葉が、私の口から漏れた。
「邪魔になる。それだけ……か」
たった今、篤樹に言われた言葉を繰り返して呟くと、初めて篤樹の声を聞いた時のことが脳裏に蘇って来る。
『弓道部の見学に来たなら、呼吸音も自粛するくらいのつもりで気配消して佇んでろ。それが出来ないなら、邪魔なだけだ。さっさと神聖な道場から出て行け』
不遜だけど堂々と言い放った篤樹が創り上げた、弓道場に広がる凛と張り詰めた空気。
私はあの時、篤樹に一目惚れした。
今も、仕事中の篤樹はあの時と同じ空気を纏う。
篤樹にとってオフィスは『神聖な道場』に匹敵する場所なんだろう。
それなら、今の私は邪魔になるだけかもしれない。
人生で二度、同じ人に失恋をした。
本当は弱くて臆病な私には、到底乗り越えられる痛手じゃない。
特に二度目は……寄り添って共鳴出来るかもしれないなんて、束の間でも夢見てしまったから、心は抉れて修復不可能だ。
アシスタントを降格してもらうべきだ。
冷静に考えて、そう思う。
けれど、代わりのアシスタントが橋本さんになるのなら、私はまだ納得出来ない。
篤樹は落ち着いた口調でそう言うと、私を一瞥した後、会議室から出て行った。
一人取り残されて、私は自己嫌悪の溜め息をつく。
「……懐かしい。その言い方」
そんな自嘲めいた言葉が、私の口から漏れた。
「邪魔になる。それだけ……か」
たった今、篤樹に言われた言葉を繰り返して呟くと、初めて篤樹の声を聞いた時のことが脳裏に蘇って来る。
『弓道部の見学に来たなら、呼吸音も自粛するくらいのつもりで気配消して佇んでろ。それが出来ないなら、邪魔なだけだ。さっさと神聖な道場から出て行け』
不遜だけど堂々と言い放った篤樹が創り上げた、弓道場に広がる凛と張り詰めた空気。
私はあの時、篤樹に一目惚れした。
今も、仕事中の篤樹はあの時と同じ空気を纏う。
篤樹にとってオフィスは『神聖な道場』に匹敵する場所なんだろう。
それなら、今の私は邪魔になるだけかもしれない。
人生で二度、同じ人に失恋をした。
本当は弱くて臆病な私には、到底乗り越えられる痛手じゃない。
特に二度目は……寄り添って共鳴出来るかもしれないなんて、束の間でも夢見てしまったから、心は抉れて修復不可能だ。
アシスタントを降格してもらうべきだ。
冷静に考えて、そう思う。
けれど、代わりのアシスタントが橋本さんになるのなら、私はまだ納得出来ない。