雪降る夜に教えてよ。
「……結果的には、愛情に、でしょうか」

恵理子さんの目をまっすぐ見て呟いた。

しばらく恵理子さんは瞬きした後、すっと立ち上がる。

「ちょっと外に涼みに行きましょう。ここは暑いわ」

そう言って、恵理子さんは私に手を差し出して……。


私はしばらく迷って、その手を取った。





****



「ああ。晴れていて、綺麗な月だこと」

恵理子さんはそう言って、テラスから宵闇に顔を出し始めた月を眺める。

時期的には十三夜も終わった週末は、少しかけたお月様。
綺麗ではあるけれど、ぼんやりしていると恵理子さんに笑われた。

「綺麗なことに悪いことじゃないわよ」

「私の母も綺麗でした……」

呟いて、同じように月を見上げる。

そう“綺麗な人”そう誰もが言っていた。でも、それを記憶している人はもう少ない。

「言葉にするのは難しいんですけれど。でも、綺麗だと言われる事や、愛情が、きっと怖いんです」

「怖い? 愛情はすばらしいことではなくて?」

「愛情そのものは……素晴らしいことだと思います」

私もそのことはよく解っている。

それは本能的なもので、きっと誰に教わると言う事でもない。

でも……無償の愛というものがあるのなら、私は見てみたいとも思う。

「では何故? 私はあの子に幸せになってもらいたいし、会ったばかりだけれど、あなたにも……幸せになってもらいたいわ」

それは、愛情に守られて、幸せに育った人の言葉。

愛情が幸せに繋がると、知っている人の言葉で……。

「否定してるわけじゃないんですよ? ただ、私の周りにあった愛情は、いつも破局に終わるんです」

呟いて、自嘲気味に笑う。
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