雪降る夜に教えてよ。
「もうドキドキですね」

笑いあっていると、テラスと会場とをつなぐ扉が開いて、私たちは振り返る。

『ああ。ここにいたのか二人とも』

渋い顔のルイ氏が来て、恵理子さんは微笑んだ。

『あなた。お客様の前でそんな顔をしてはいけませんよ』

『そんなこと言っても、まったくあの娘さんはいつもトラブルメイカーだな』

『何かあったんですの?』

『ユキに……』

言いかけて、ルイ氏は私がいたことを思い出したように言葉をとめる。

『桐生さんに何かあったんですか?』

『いや。たいしたことはないよ。ちょっと女性客の一人がふざけてね。シャンペンをかぶったくらいで』

あら。それは大変だ。思わず歩き出した私を、ルイ氏は引き止めた。

『たいしたことはないから、行かないほうがいい』

行かないほうがいい? それはとても強制力のある言葉だ。

『……何故ですか?』

私の視線にルイ氏がたじろぐ。漠然とした不安が広がる。

『いや。本当にたいしたことはないんだ』

『たいしたことがないかどうか、この目で確かめます』

『サナエ! やめなさい!』

静止を振り切って私は会場に戻った。

見渡すと、会場のどこにも桐生さんの姿はない。

じりじりとした思いで、会場の人間の顔を確認していきながら歩いていると、腕をいきなり引かれて立ち止まる。

「秋元さん? 何でここに?」

見上げると、裕さんが目を丸くして立っていた。

「一条さん。桐生さんを見ませんでしたか?」

「隆幸? 隆幸なら二階に……だけど今は」

「ありがとう!」

私は裕さんから腕を離して、小走りに走り出した。

何があったかは知らない。

でも、不安で仕方がなかったから……だから私は走って。

会場を出てしばらくのところで、思い切り人とぶつかった。

「ごめんなさい!」

「あ。いえ。こちらこそ……」

倒れこんだ私を助け起してくれた男性は、そのまま目を丸くする。

「早苗?」

「え?」
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