Sweetie Sweetie Sweetie





初めてシャンパンを卸した、あの日から、



度々、シャンパンを卸すようになった。



そうすると、チェックは一気に十万円ほど跳ね上がることは、わかっていたけれど、





「ミィちゃんと離れたくない、ずっとこの卓にいたい……」





リンが、そう言うと、卸さずにはいられなくて、



何より、ご褒美みたいな、エレベーターでのキスが欲しくて、



一本、また一本と、シャンパンを卸していた。





そして、ある日、





「大事な話があるんだけど……」





リンは、言いにくそうに、切りだした。







★★★★★







「ミィちゃん、未収って知ってる?」





聞いたことのない単語だった。





「あのね、最初の頃のチェックが二万でおさまってたのは、俺が、超えたぶんを立て替えてたからなんだよね。そういうの未収っていうんだけど……シャンパンを卸す余裕があるなら、その未収を詰めてほしいんだ」





あの二万円という金額に、そんな事情があったなんて、知らなかった。





「できれば、月末までに……」





未収金額、十五万円。





「最初は、自腹切るつもりでいたんだけどね。ミィちゃん、高校生だから、二万以上はキツいだろうと思って。でも、けっこう余裕あるみたいだし。逆に、俺の方が、これだけの未収の自腹はキツくてさ……」





その話を聞いた次の日、ATMに駆け込み、残高照会画面に表示された数字を見て、





愕然とした。





はじめ、百万円以上も入っていた口座には、五万円とちょっとしか残っていなかった。





咄嗟に、込み上げてきたのは、





“切られてしまう”





という、恐怖。





その恐怖に、いてもたってもいられなくなって、





すぐに、リンに、電話をした。





「……ごめん……どうしよう……もう五万円しか残ってない……」



『そっか、困ったね。ミィちゃん、最近、シャンパン卸したりして目立ってるし、社長や代表が知ったら何て言うか……』



「じゃあ……どうしたらいいの……」





怖かった。





リンの事情も知らずに、



会いたいからと店に通い、もっと隣にいてほしいと欲を出し、勢いだけの飲み方をして、



リンを苦しめて、





『とりあえず、落ち着こうよ』



「うん……」



『電話じゃなくて、店で話そう? こういうことは、ちゃんと顔合わせて話したいから』





そうして、リンに、切られてしまう、ということが、





「う……ん……」





怖くてしかたなかった。





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