Sweetie Sweetie Sweetie
“おシゴト”は、上手くできたようだった。
報酬は、客からリンへ渡り、
「ミィちゃん、よく頑張ったね。お客さん、大満足だったみたいで、報酬はずんでもらったよ。これで、未収はチャラ。でも、それだけじゃ、ミィちゃんが可哀想だから、はい、これ……」
そして、リンから私に、二枚の一万円札。
二万円……
二人の始まりの数字、それを、意識したのか、偶然だったのか、わからないけれど、
リンのことだから、意識したのだろう、と思った。
そう思った方が幸せだから、そう思うことにした。
リンは、その後、あの言葉の通り、私を綺麗にしてくれた。
本当は、“おシゴト”の最中の、生々しい、恐怖感も嫌悪感も悲壮感も、何一つ、忘れていなかったけれど、
リンが、綺麗にしてくれたから、忘れたことにした。
そうした方が楽だから、そう、忘れたことにした。
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そして、八月。
平穏な夏休みを過ごしていた。
リンの店には、行っていなかった。
理由は、ただ、何となく。
また、今年は、父親のところへも行かなかった。
理由は、こちらも、何となく。
それは、
これまで駆けてきた、めまぐるしい日々に、
どこか、罰の悪さを感じていたからだろうか。
それとも、
ただ、疲れていただけだろうか。
いずれにしろ、平穏な夏休み。
手持ち無沙汰に学校の宿題をこなしていた時、
リンから、着信があった。
『元気?』
「うん」
『何してたの?』
「宿題……」
『そっか、宿題か、懐かしいな。そうだよね、ミィちゃん、高校生だもんね』
「うん……」
『ねぇ、八日って、あいてる?』
「うん、夏休みだから、どうして?」
『どうして……って、ミィちゃん、誕生日でしょ』
「ああ、そっか」
『一緒にお祝いしようよ』
ついさっきまで、平穏な夏休みだと思っていたのに、
また、めまぐるしく動きだす、
そんな予感がした。
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