めぐり逢えたのに
「君も僕も、それから君の元恋人もみんな同じさ。君のお父さんにはなぜだか絶対逆らえないんだ。」
佐々倉がため息をついた。
それにしても……、彼が急に私の前から姿を消した背景にはそんなことがあったなんて私は全く想像もしていなかった。
ちょっと考えればわかることで、とんでもなくナイーブなことではあったが、その当時の私は、彼との別れに父がからんでいるなんて想像もしていなかった。
それどころか、父には彼のことさえ知られていなかったと思っていたのだから、のん気な話である。
それで、あの晩のことは特にとがめられなかったのか、と、私は思い至った。
恐らく、父は私が彼と一緒にいることは大体わかっていたのだろう。
ひょっとすると、彼の方から最後に一晩一緒にいさせてくれと告げた可能性だってある。
私は、あの時期、彼と全然一緒にいられなかったから、非常に焦れていたし、高校卒業後、家を出て彼の所に転がり込むぐらいの勢いだったから、そんな暴挙に出られる前に父としては手を打っておきたかったのかもしれない。
一晩のことは見逃してやるからきっちり別れろ……、言外にそんな脅しをかけて笑いながらワインで乾杯する父の顔が目に浮かぶようであった。