めぐり逢えたのに
「それに、あんまりお金もないし。こういうところで買い物したら、きっと、すごくお金がかかるんですよね?」

受付嬢はにこやかに笑った。見る人が見れば一目瞭然だが―——、ただの営業スマイルではなかった。

「でしたら、ハンカチなんかいかがでしょう? こちらに紳士物のハンカチ売り場がありますから、素敵なのが見つかると思いますよ。」

「うん、それにします! ありがとうございました!」

元気よく答えると、しおりはすっ飛んで行った。

しおりは、自分のハンカチなんて今まで買ったことがなかったし、ただの薄い布切れが千円もするのにたまげた。

それでも、淡いブルーの綺麗に畳まれたハンカチは、いかにも佐々倉さんが持つのにふさわしいもののような気がして、初めて、自分が佐々倉さんのために何かしてあげることが出来そうなのが、何よりも嬉しかった。


< 169 / 270 >

この作品をシェア

pagetop