めぐり逢えたのに
会うのを楽しみにしていたのは、私だけだったんだ、って思い知らされて、私は何とも言えない気持ちになった。

彼はそんな私にお構いなく、一人でどんどん歩いていく。私がそのまま立ち尽くしていると、十メートルぐらい進んでから彼が私の方を振り向いた。

「来ないの?」

私は、一時間も待ってた事なんて即座に忘れて、彼の隣りまで猛ダッシュで追いついた。

「どこに行くの。」

私が恐る恐る聞くと、彼は

「うちに決まってんじゃん。」

と短く答えて無言で歩き続けた。彼は意外に急ぎ足だった。
私ははぐれないように一生懸命歩いた。まっすぐ前を見て進む彼の横顔を飽きる事なく眺めることができて幸せな気持ちで歩いていた。
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