めぐり逢えたのに
12、3分歩いただろうか。
だいぶん築年数の経った古い建物の前についた。結構大きな家だったから、私は少しびっくりした。
こんなに大きな家だったら、一人なんだし狭くてももうちょっと綺麗なマンションか何かに住めるんじゃないかと思ったから、正直にそんな風に言うと、彼は口をあんぐりと開けて大笑いをした。涙をこぼす程大笑いをした後、鍵をあけながら説明してくれた。

「これ、一軒の家じゃなくてアパート。中に10人の人が住んでるの。」
「え? でも、入り口が一つしかないのに?」

私が思わず聞き返すと、彼はまたげらげらと笑った。

「うん。中に共同の廊下と洗面所とトイレがあって、部屋が別になってるから。」

彼は私を中に案内してくれた。入ってすぐのところにまるで保養所みたいな下駄箱があって、靴をそこで脱いでから廊下を進んで行くと、一番奥の部屋が彼の部屋だった。

部屋の鍵をあけて中に入ると、そこは6畳の畳の部屋だった。
彼の部屋は綺麗に片付いていた。ベッドが一つ、真ん中にちゃぶ台(初めて見た)があって、部屋の恥じっこに本棚が一つと小さなテレビとテレビ台があるだけだった。洋服はきれいに畳まれたものが、部屋の隅にむき出しに積み上げられていた。
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