めぐり逢えたのに
「こんなに有名になっちゃったら女がほっとかないでしょう。この無邪気な笑顔で何人女を泣かせたんですか。」

佐々倉はいきなりカチンとくることを言った。
拓也も、妬み僻みでこんな風に言われるのは慣れているので、軽く流していた。

「おかげさまでコマーシャルにも出てますけど、来年はどうなってるかわからないのが、この仕事ですから。」

「好きなことが出来るだけいいじゃないですか。」

「佐々倉さんだって、戸川で活躍されてると伺ってますよ。」

「戸川で活躍ですか……、あっちぺこぺこ、こっちぺこぺこで、おまけに政治家のセンセイ方に頭下げるのを活躍というなら、そうなのかも知れませんけど。」

佐々倉の言い方はずいぶん自虐的だった。

「そんなに大変な部署なの? 戸川の父に話した方がいい?」

「やめてくれよ。ただでさえ、肩身がせまいってのにさ。」

私の知ってる佐々倉は、いつでも自信があって、ゆったりとした余裕をみせていたから、この焦燥ぶりは意外だった。

「ねえ、……しおりさんとうまくいってないの?」
「……まあね。」

佐々倉は、暗い顔をさらに暗くさせた。そして、長い長いため息をついてから、話し始めた。



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