めぐり逢えたのに
しおりさんは自分たちのマンションに戻ると、急いで出て行く支度をしているようだった。佐々倉は慌てて彼女の後を追っていた。私も、二人がとても気になったのでそのまま追いかけて行った。(佐々倉の方に入るのは初めてのことだった)

「しおり、ちょっと待てよ。」

佐々倉が必死に止めるのも聞かず、しおりさんはただ黙々と身の回りのものを大きなスーツケースに詰めていってた。
すっかりスーツケースがパンパンになると、しおりは初めて佐々倉の顔を見た。

「直樹、今までありがとう。あたし、直樹のそばにいれてすごく幸せでした。」
「じゃ、行くなよ。」
「そうよ、しおりさん、直樹のそばにいてあげて。」

気がつけば、私も口を出していた。
しおりさんは、佐々倉と私の顔を交互にゆっくりみて、悲しそうに首を振った。

「こんな生活、ずっと続けられるわけないもの。」
「じゃあ、万里花とは別れるよ。」
「そうよ、私も佐々倉さんと別れるわよ。」

しおりさんは、もう一度、佐々倉と私の顔を交互に見て、さっきよりももっと悲しそうな顔をした。

「それが出来ない事は、みんなわかってるでしょう?」



しおりさんは家を出て行った。


しおりさんは、一度も私たちを振り返ることはなかった。



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